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畑仕事、キャンピングカーの旅、サウナ、読書…晴耕雨読の日々を綴る【いくら君のこころととのう日記】

ミシェル・ウェルベック『服従』読了

読書について 2025年2月2日

ミシェル・ウェルベック『服従』読了

 

 先日、読了した『プロット・アゲンスト・アメリカ』は、1940年アメリカでナチスを信奉するリンドバーグがルーズベルトを破り合衆国大統領になった結果、合衆国ユダヤ人が迫害されていく、という物語であったが、今回は、2022年フランスにおいてイスラーム政権が樹立する物語である。

 主人公フランソワは45歳の独身の大学教授である。19世紀末に活躍したデカダン作家「ユイスマンス」の研究者で現在パリ第三大学で教鞭をとる。恋人は22歳のフェラチオ上手なユダヤ人「ミリアム」と微妙な恋愛関係を持っている。

 2022年フランス大統領選挙の決選投票でイスラーム政権が樹立する。ミリアム家族はユダヤ人迫害を恐れイスラエルに帰国する。フランソワは面倒に巻き込まれることを恐れパリを離れ地方都市「マルテル」に一月滞在し、ほとぼりが覚めた頃にパリへ帰る。大学から頓首の通知と年金の手続き書類が入った通知をポストに見つける。イスラーム大学はイスラム教徒の男性でなければ教授職につけない。サウジアラビアの潤沢なオイルマネーにより、フランソワは多額の年金を保証される。政権が面倒を回避するため豊かな年金を約束したのだ。生活だけは保証されたフランソワは特に何もせず過ごすが、恋人のマルテルとも別れ、仕事も失ったフランソワは、心のバランスを崩し、緩慢なる死を覚悟する。そんなとき、大学学長であり、新政権のもとで外務大臣に指名された「ルディシュ」の生活を垣間見る機会に恵まれる。イスラム教徒であるルディッシュは四十代の妻と十五歳の妻をもち生活を謳歌し、次のように語る。

 「『O嬢の物語』の物語にあるのは、服従です。人間の絶対的な幸福が服従にある。そして続けて「人類の頂点にあったヨーロッパは、この何十年間で完全に自殺してしまった」、つまりキリスト教が支配する世界では、さまざまな退廃が進み、世界は死を迎えている。それを救うことができるのはコーランのみである」と。

 フランソワはイスラム教に改宗することを決意し、大学に戻ることと、一夫多妻を求め、自身の研究者としての誠実をすて、心の安定と将来への安心を得ることを決意する。

 インテリの脆弱さ。

 面白かった。ディテイルが書き込まれていて妙なリアリティーがある。民主主義・資本主義・人権等々は、一部ではあろうが、相当疲弊している。トランプもアメリカには男と女しかいないと宣言し、LGBTQを退廃と捉え攻撃を始めている。あるところでは確かに強烈な人権意識に違和感を感じている一定の層があるのは確かなのだろう。そして、本作が多くの読書を獲得したことの意味は、制度疲労を起こしている人間主義にノーを突きつける物語が、ある種のリアリティーを持って受け入れられている査証でもあろう。

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