読書について 2023年7月14日
三島由紀夫「英霊の聲」
先日より、平野啓一郎『三島由紀夫論』を読んでいる。本作は、『仮面の告白』『金閣寺』「英霊の聲」『豊饒の海』の4作品を縦横に読み解きながら展開する、個々の作品論でもあり、また三島の作家論にもなっていると言う平野の力作である。
『豊饒の海』は学部の卒論で取り扱い、『金閣寺』は修士論文で取り扱った。よって、かなりの精読をしてきたつもりである。また、『仮面の告白』は三島の戦後のいわば第二のデビュー作であり、かなりの問題作であるため、多くの作家論に引用され、私もかなり読み込んできた。
しかし、「英霊の聲」は40数年前に読んだはずであるが、記憶が薄れてしまったため、本日読み返した。昭和41年6月「文藝」発表の短編であるが、すでに、政治活動を開始し、三島20代の「死ねなかった」トラウマが蘇ってきた、41歳時、晩年の作品である。
「能の修羅場の様式を借り」た作品で、「私」が帰神(かむがかり)の会(神道でおける「イタコ」のようなもの)に出席した夜、の出来事を記した物である。2・26事件の将校たち、あるいは特攻隊の隊員たちの霊が舞い降り、盲目の「川崎君」の肉体(口)を借りて、「などてすめらぎは人間となりたまひし」と人間宣言をした天皇に対し呪いの言葉を並べる、と言う作品である。
明日は、「英霊の聲」の章を読んでみる。