読書について 2023年8月24日
平野啓一郎『小説の読み方』読了
フランス心理文学読解シリーズを少しおやすみし、今回は平野啓一郎『小説の読み方』である。小説の読み方は、人によって、時代によって、性別によって、置かれる立場によって、それぞれ自由であることが保証される。
しかし作者が魂をかけ紡ぎ出した物語の真の意図を理解できなければ、作者に寄り添うことはできず、自分本位な誤読に陥る可能性もある(誤読も自由の範囲にせよ)。そういった陥穽に陥ることなきよう、我々はただ漫然と小説を読むのではなく、しっかりと意識的に読書術を磨かなければならない。
平野氏は、優れた読書家というだけでなく、実作家として、小説を書くことの意味から、そこに込められた作者の意図・願いなどを取りこぼさず読み込めるよう、さまざまな方法論を駆使しつつ、実際の作品をモデルにして、我々にその「コツ」をそっと紹介してくれる。
それは、ポールオースターだったり、ドフトエフスキーであったり、綿谷りさであったりもする。しかし、そこにあるのは作品論ではなく、常に小説読みの我々読者に優しく寄り添ってくれてる読書家からのアドバイスなのだ。
ちなみに、本作は『本の読み方』の姉妹編として書かれた。順序が逆になったが、近々こちらも読み合わせたい。