疲労回復
9月10月,二ヶ月に渡って,二つのことを並行してやってきた。
一つは小説を書くこと。もう一つが『象徴交換と死』の読解。ほぼ同時に始めたことが,ほぼ同時に,とりあえずの終わりを迎えた。
小説は5月半ばに100枚程度のものを書いてみた。この時はとにかく誠実に、混じり気無しの文章を心がけて書いた。その後,平野啓一郎『三島由紀夫論』読了し,久しぶりに『仮面の告白』と,森鴎外『ヰタ・セクスアリス』を読み,こんな感じで書こうとイメージして次作の構想を練った。今度は、文章を少し跳ねさせようと考えた。そして,9月3日起筆で、十月終わりまでから取り組んできた。
10月頭位が絶好調で,雷に打たれたような絶対的感覚で書き進んだ時もあったが,半ばからだんだん筆が進まなくなり,体調も芳しく無くなってきた。睡眠時間は確保されてはいるものの,質が良くない。寝ながら小説のこと,登場人物のことをずっと考えているという有様であった。楽しいのだが、苦しい。そのうち、小説を書いてる時間だけではなく、『象徴交換と死』を読んでいても,心拍数が上がり,深呼吸しても下がらないようになってきた。いつも呼吸が浅く苦しい感じ。サウナに行っても,ドキドキしてきて5分と入っていられない,という状況が2週間以上続いた。
それでも,脱稿後2日おいてすぐ推敲に入ったのだが,3日でやめてしまった。まだ,ダメだ。推敲できるほど客観的状況に脳味噌が至っていない、というのが結論。
こんなことして,いったいどんな意味があるのか?とか,まったく2ヶ月かけて反古の山を作っただけなのではないか?などの,否定的な言葉が頭に響き渡り、徒労感に絶望する時もあるし、また、いやいや、これをどうにか形にしなければ、と自己を叱咤する時もある。そう,今更,売れっ子作家になりたいとか,自分の作品を後世に残したい,などとは考えていない。しかし,ある程度のレベルまでは自分の言葉を引き上げたい。商品レベルとは言わないが,他者の目を汚してもそれなりの意味がある程度のものには引き上げたい,とは思っている。今の原稿ではまだダメだ。もう少し距離をおいて,頭を冷やしてから,やり直そう,と,開き直った。
そうやって放置してから,4日が経つ。ずっと,「ヨーコ」や「ナオ」(登場人物の名前)が,24時間頭から離れなかったのだが,最近ようやく考えないようになってきた。ここ二日はよく眠れた。
今,スカイスパの15階にあるソファーに横になって,これを書いているのだが,今日のサウナはいい感じでととのった。心拍数もさほど上がらず,上がっても,気持ち悪いというか,死ぬんじゃないか?という恐怖にも見舞われず,心地よくいい汗をかけた。
言葉を紡ぐ作業というのはなかなか大変なのである。