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畑仕事、キャンピングカーの旅、サウナ、読書…晴耕雨読の日々を綴る【いくら君のこころととのう日記】

柄谷行人『トランスクリティーク カントとマルクス』読了

読書について 2024年4月28日

柄谷行人『トランスクリティーク カントとマルクス』読了

 柄谷行人は2022年10月に彼の思想の到達点ともいえる『力と交換様式』を発表した。

これは資本主義の核心を追究する野心作であり、それを交換様式から見るという試みである。交換様式を武器に四つの事象を分析してみせる。その手腕はてだれており、彼自身の人生を大半をこの思考に回してきたため、練りに練られ、考えに考えられてきた思想であるため、難解ではあるが、非常に丁寧で例もわかりやすく、親切に我々読者を彼の思想に導く作品であった。

 ちなみに柄谷は1941年生まれである。本作発表時が81歳である。そのほぼ10年前に『世界史の構造』という大著を世に問うている。

 あらわれたものは違うが、根本にあるものは両者とも「交換様式」を軸に考察していく手法である。この2作の原点となるものが、今回の『トランスクリティーク カントとマルクス』である。柄谷はカントからマルクスを読み、マルクスからカントを読むといった交差した思想から新しいものを生み出す手法を「トランスクリティーク」と名付け実践してきた。ここでは柄谷自身がカントとマルクスを引用しながら考察を深めていくのであるが、彼自身まだ何が出てくるのかわからないような状態で、模索し思考しながら叙述しているといった感じであるため、思考の流れが整理されておらず、読者にはわかりづらい。

 『世界史の構造』『力と交換様式』は非常に整理されており、読者に対し親切であるが、『トランスクリティーク』は荒削りである。筆者もまだまだ若いということであろうか。誰が親切に欠いてなどやるものか、といった尖った矜持がある。(若い!彼はこの時、還暦であった!)

 そして柄谷は、本作末びでカントとマルクスを批判しつつ、国家という暴力装置をアウフヘーベンした、アソシエーションを提唱するのである。その発見がのちの作品原点となっているのだ。

 

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