logo メニュを開く

畑仕事、キャンピングカーの旅、サウナ、読書…晴耕雨読の日々を綴る【いくら君のこころととのう日記】

黒川伊保子『孫のトリセツ』読了

読書について 2024年7月9日

黒川伊保子『孫のトリセツ』読了

 黒川伊保子『孫のトリセツ』読了。新聞で見てついポチっと。あっという間に読めました。

 筆者は、いくら君たちとほぼ同世代で2歳の孫がいる脳科学者・AI研究者である。これまでトリセツシリーズとして、『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』『夫婦のトリセツ』など多数の著書を上梓してきた。そのシリーズの一環としての『孫のトリセツ』である。まず、冒頭にあるが、本社は孫の取扱説明書ではない。子育ての意識改革を促す啓蒙書、特に祖母祖父における孫への関わり方の指南書というところか。

 筆者は言う。我々が受けてきた昭和の教育、あるいは子供達に与えてきた平成の教育は「いい子」や「歯車人間」を育てるものであった。曰く、遅刻をしない。ルールを守る。与えられた課題を適切かつ迅速にこなす、等々。そういった20世紀21世紀型の教育はもう古い。これからはAI時代である。知識や課題解決はAIに任せておけばいい。大きな組織の有能な歯車思考ではこれからの時代を生きていけない。これからはAIにできない、あるいは彼の弱点である「発想力」「対話力」「問いを立てる力」を磨かねばならない、と。

 では、「発想力」「対話力」「問いを立てる力」を伸ばすには何が必要か。どういったことに注意すべきか。その根本になるのは自己肯定感である、と。何をいっても自分は認められている、という安心感、これが発想の自由さを磨き伸ばすと言うのだ。だから、いきなりのダメ出しはNGである。彼らの柔軟な発想力を殺してしまう。なぜ宿題をやらないんだ! なぜ、忘れ物ばかりするんだ! なぜ、先生の言うこたが聞けないんだ! こんなダメ出しばかりしていたら、子供は萎縮し、思ったこと、気がついたことを口にしなくなる。口にしなくなれば深く思考しなくなる。自己肯定感は減り、周りを見て同じように、突出しないように、と考えるようになってしまう。

 しかし、子育ては根気が必要だ。母が仕事に行く時間帯に、子供がご飯を食べない、ぐずぐずしている、などて怒鳴ってしまう気持ちはよくわかる。親は若く、またストレスも多い世代だ。彼らを責めるのは酷というもの。そこで登場するのが、祖母祖父である。我々は、孫が可愛いのは当然だが、親よりも距離を保つことができるし、余裕がある。だから、孫の母親(娘・お嫁ちゃん)を第一に立てながらも、やんわりと孫を包み込み、彼らの心理的安全性を確保してやらなければいけない。こんなことを言ったら叱れれる。こんなことを言ったら馬鹿にされる、という萎縮した心理状態では、自由な発想は育たない、というわけだ。

 そのことを保持できるよう、母親経験者であり祖母でもある筆者自身が具体的な問題を提示し解決策のヒントを与えてくれる。「はちみつ問題」「背中スイッチ」「鼻水吸引機」こう「公園デビュー」「ワセリン」「うんち」「早期外国語教育」等々、筆者が出会ってきた多くの悩みを具体的に挙げ脳科学者らしく答えをのヒントを提示する。

 最後に、一つ面白いと思った項目。

 P106「早期外国語教育は、是か否か」の項で、こんな文章で当たったので以下引用する。

 「日本語は、母音を主体に音声認識する言語である。母音は複雑な波形のアナログ音で、自然界の音(笹のこすれる音、小川が流れる音、風の音、虫の音……)とよく似た音声波形を持つ。このため、日本語で育つと、自然音を微細に聞き分ける能力が高い。具体的に言うと、日本語の使い手は、自然界の音を左脳(知覚した音に情緒的な意味を付す場所)で聞くのである。ひぐらしのカナカナという鳴き声を聞いて寂寥感を覚えるのも、笹の葉のサラサラという音を聞いて清涼感を覚えるのも、日本語の使い手に強く働く感性なのだ。」

 各国の人の国民生のようなものは、彼らが話す言語の特性によって脳のどの部位を刺激するかに違いから生じるらしい。これは新しい知見として記憶くにとどめたい。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


TOPへ戻る