鈴木涼美「身体を売ったらサヨウナラ」読了
現在、概ね二つの問題を,切実な思いで研究している。
一つは,「肥沃な土壌及び土壌微生物について」である。
もう一つは「AV女優及び夜のお姉さんの認識論」である。昨今,お姉さんたちの高学歴化や品質の向上が言われて久しい。彼女たちはようやく自身を語り始めている。AV黎明期よりずいぶんと時間がかかったが,歩は確かである。
私の中での始まりは,紗倉まなの小説が芥川賞候補になったあたりからだろうか。多くの傷やブレを抱え込んだ人生は小説ネタの宝庫であろう。30年以上経ち,ようやく彼女たちAV嬢は自分の言葉で語ることができるようになった。社会の変化が,その世界のいたたまれなさを若干緩和し,哲学する余裕を与えた。だからといって,差別はされるし葛藤を抱えているのは変わらない。では,自ら打って出ればいい。そして,社会は知的ビッチを受け入れ始めた。その類まれなるあり方を歓迎する方向に舵を切ったのである。
そして出会ったのは本書の筆者である,鈴木涼美氏である。慶應卒,東大大学院修了。さらに日経新聞の記者の後作家へ。
最初,「鈴木涼美」が読めなかった。〈スズキ〉はまぁいい。で〈スズミ〉? 意識下でその読みを却下し,闇へ埋没した。だからいつまで経ってもわからない。読めない。ジョーシキという権力が,私の脳を押さえ込み,柔軟性を奪った。つまり,私は,常識とやらに侵された,つまらん奴なのだ。公務員を定年まで勤め上げてしまうような人間だ。常識に縛られて奴隷化していることにも気づかないトンマなのだ。
で,かくして彼女は,まったくペンネームとしては非常識な〈スズキ スズミ〉なのである。
本書には,彼女が大学生時代の生活を中心に編まれたエッセイである。慶應湘南キャンパス時代,彼女は学校生活もそこそこに,夜のお姉さんを稼業としていた。キャバクラで大金を稼ぎ,贅沢な生活をするとともに,言い寄る男たちに身体を売る。貢物をいただく。かと思えば,くだらんホストに入れ上げ,ドンペリを湯水のようにグラスタワーに注ぎ,散財する。寂しくて仕方なくて,でも,自分の価値を高めたくて,不安定の中で模索する青春。
文章はグループしながら勢いよく飛び跳ねるが,散り散りになることなく,落ち着くこともなく、性懲りもない。
父親は法政大学教授。母親は絵本作家。自宅は鎌倉の瀟洒な洋館。
ちなみにあとがきは筆者を7才から知っているという島田雅彦!法政つながりだろう。完璧すぎ。
東大の院生まですにAV女優としても活躍。。ちなみに修論は「AV女優の社会学」!ブレがない。
最近書いた小説「ギフテッド」は,芥川賞候補。
どうなってんの?
ちょっと分けてよ。