読書について 2023年6月30日
『消滅世界』(村田沙耶香)読了
村田沙耶香の作品に触れるのは、芥川賞受書作『コンビニ人間』以来、2作目である。
『コンビニ人間』読了のさい、ものすごい人が出てきたな、という感想を持った。とにかくものすごい衝撃を受けた。今まで、存在していなかった新しい人類の登場、というか、全く新しい世界観を表出した作品として読んだ。
しかし、その後何冊か購入したものの日々の雑事に紛れ、積読状態になっていた。本を整理していて、『消滅世界』を発見し、読み始めた。
多分、作品の完成度は『コンビニ人間』の方が上だろう。しかし、世界に、人類に喧嘩を売っている非常識な力は『消滅世界』の方が上だ。
セックスではなく人工授精で、子供を産むことが定着した世界。そこでは夫婦間の性行為は「近親相姦」とタブー視され、両親の姓行為によって生まれた主人公「雨音」は母親に嫌悪感を抱きつつ、性的行為を行う。ぶっとびの世界観。
異性愛に含まれる「所有原理」は男性側からの押し付けである、という思想へのアンチテーゼなのだ。ジェンダーレス社会において、セックスは、「男」が「女」を所有するための行為ということになる。所有され、隷属されるのではない、女性的な暖かさの共有みたいなものが、この『消滅世界』には存在する。しかし、突き詰めていけば、人類を存続するためには、愛も性愛も本能から外した、人工的な妊娠出産子育て教育というものにならざるを得ない。
世界が消滅するのは近いだろう。
デビューして、もう二十年も経つのね。驚き。