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畑仕事、キャンピングカーの旅、サウナ、読書…晴耕雨読の日々を綴る【いくら君のこころととのう日記】

カミュ『異邦人』読了

読書について 2023年12月15日

カミュ『異邦人』読了

アルベール・カミュは1913年11月7日、フランスの旧植民地アルジェリアで生まれた。アルジェリアは地中海を挟んでイタリアの向かい側、エジプトの隣にある。

カミュは、1940年5月に本作を発表し、27歳にして一躍文壇の寵児となったという。

本作は、1部と2部に分かれている。

1部は、主人公、青年ムルソーが、母の葬儀の翌日海水浴に行き、女と関係を結び、映画を見で笑い転げ、友人の女出入りに関係しアラビア人を銃で殺害するまで。文体は、乾いており、事実を淡々と積み重ねていく。ムルソーは、知的だが、どこか冷めた青年である。描写は淡々としながら、暑さと眠りについては、しつこいくらいに強調される。

2部は、投獄されたムルソーと弁護人、判事、裁判官とのやり取りの中で、ムルソーから受ける、何事にも媚びないアンニュイな独特の雰囲気に、弁護士は頭を抱え、裁判官は怒り、死刑判決が下される。ムルソーは特にとんがっているわけでもなく、ただ自分に正直に生きるだけである。裁判を自分に有利になるよう働きかけることはしない。ただ、正直に彼の思いを語るだけだ。周りの皆は、母の葬儀の際涙を流さなかった、という一点で彼から負の印象を受け、彼が極悪人であるが如き判決文を作成していく。死刑判決を受けたのち、当然ながら彼は苦悩する。他者からは一貫性のない思いつきの発言をするように受け取られるムルソーであるが、世俗的に標準化された正義に対し不快感を持ち、自分を貫き通す。殺害の動機は「太陽のせい」という有名な箇所には痺れる。彼のような人間は、システムに迎合した社会的立場のある人間には理解されない、無力でアンニュイで気まぐれで誰よりも自分に誠実なムルソー。自分は幸福であると確信し、処刑の日に大勢の見物が憎悪の叫びをあげてくれることを望む。

 

この世は全くの不条理である。

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