昨今のコロナ騒動で、この『ペスト』が再発見され、改めて多くの読者の手に取られたという話は耳に新しい。ようやく昨年の5月に、われらの時代の「ペスト」である「新型コロナウイルス感染症」も5類に移行し、平穏に戻りつつある世界であるが、今、この作品を読み直す意味は大いにある。 前回の・・・
カミュ『ペスト』読了
ジャン=ポール・サルトル『嘔吐』読了
前回のカミュ『異邦人』に引き続き、不条理シリーズ。今回は、サルトル『嘔吐』です。本作は、読み続けるのが、難しく(彼の文章が私を拒んでいる感じ)、なかなか進まず、苦労しました。 サルトルは言わずと知れた「実存主義哲学」の人であります。右目が斜視で特徴的な容貌を持つ方だと、子供・・・
カミュ『異邦人』読了
アルベール・カミュは1913年11月7日、フランスの旧植民地アルジェリアで生まれた。アルジェリアは地中海を挟んでイタリアの向かい側、エジプトの隣にある。 カミュは、1940年5月に本作を発表し、27歳にして一躍文壇の寵児となったという。 本作は、1部と2部に分かれている。・・・
中島義道「哲学の教科書」読了
花村萬月が好きだ。彼の力技にいつもねじ伏せられる。心地よい敗北感と共に。 花村のエッセイの中で,中島義道「哲学の教科書」を読むべし,とあるので読んだ。 私は尊敬する人間の前では至って素直なのである。 のっけから,ひっくり返った。作者は怖くて跳び箱など飛べなかったのだが,・・・
ギュスターヴ・フローベール『ボヴァリー夫人』読了
ようやく読了。11月3日から頁をくり始めたのでほぼ一ヶ月かかりました。それは、前半部分の読みになかなか乗らなかったからです。とにかく描写が徹底的に細かいため、悪く言えばまどろっこしい。よって、読み手自身が物語の中に没入できず、なかなか進まないという状態でした。しかし。後半か・・・
金原ひとみ『蛇にピアス』読了
言わずと知れた、金原ひとみのデビュー作である。彼女は本作で「スバル文学賞」と「芥川賞」をダブル受賞した。弱冠二十歳の時である。同時に、綿谷りさも『蹴りたい背中』で芥川賞を受賞し、当時、最年少・女性とかなり話題になった。綿谷りさは正当的な可愛らしい女の子で、早稲田大学在学中・・・
ジャン・ボードリヤール『象徴交換と死』読了(一応)
9月6日より、毎日2〜3時間本書読解に当ててきた。文章構成が非常に難解(ボードリヤール自身の問題・翻訳でるという問題)な上、筆者が使う術語も筆者独特の解釈のものが多く、一文を理解するためには、何度も辞書をひき、主語を確認し、遠くにある述語と結びつけ、とりあえず文章の構成を理・・・
ポール・オースター『幽霊たち』読了
現代アメリカ文学。奇妙な小説である。自己の存在自体が揺らぐ、現代人が抱える問題を描いた作品であるといえよう。 小説は次のように始まる。「まずはじめにブルーがいる。次にホワイトがいて、それからブラックがいて、そもそののはじまりの前にはブラウンがいる。」そうなのである、登場・・・
トーマス・マン『トニオ・クレエゲル』読了
IMG_5529 9月3日から『象徴交換と死』を読み続け,ようやく五章に入ったところ。 で,また,つまみ食いです。今回はマン『トニオ・クレエゲル』です。 本作は,マンの青春の書です。芸術家としての自分と世俗的な自己との対峙。 若いうちは,天才を気取って,世俗的なも・・・
オスカー・ワイルド『サロメ』読了
ワイルド『サロメ』読了。薄い本である。岩波文庫版(福田恒存訳)で実質77頁である。短い戯曲である。 ワイルドは1954年アイルランド生まれ。本作は1891年パリ滞在中に書かれた。 美しい月光のもと、ユダヤの王「エロド」の前で美しい舞を披露した、王女「サロメ」が、褒美として・・・