現代アメリカ文学。奇妙な小説である。自己の存在自体が揺らぐ、現代人が抱える問題を描いた作品であるといえよう。 小説は次のように始まる。「まずはじめにブルーがいる。次にホワイトがいて、それからブラックがいて、そもそののはじまりの前にはブラウンがいる。」そうなのである、登場・・・
ポール・オースター『幽霊たち』読了
トーマス・マン『トニオ・クレエゲル』読了
IMG_5529 9月3日から『象徴交換と死』を読み続け,ようやく五章に入ったところ。 で,また,つまみ食いです。今回はマン『トニオ・クレエゲル』です。 本作は,マンの青春の書です。芸術家としての自分と世俗的な自己との対峙。 若いうちは,天才を気取って,世俗的なも・・・
オスカー・ワイルド『サロメ』読了
ワイルド『サロメ』読了。薄い本である。岩波文庫版(福田恒存訳)で実質77頁である。短い戯曲である。 ワイルドは1954年アイルランド生まれ。本作は1891年パリ滞在中に書かれた。 美しい月光のもと、ユダヤの王「エロド」の前で美しい舞を披露した、王女「サロメ」が、褒美として・・・
アベ・プレヴォー『マノン・レスコー』読了
毎回書いているが、芥研の次の課題がボードリヤール『象徴交換と死』という難解な哲学書である。九月六日に読み始め、現在4分の3というところである。なかなか前に進まないため、ちょこちょこ他の本も並行して読む。 今回は、アベ・プレボー『マノン・レスコー』である。作者は北フランス・・・
コンスタン『アドルフ』読了
次回の芥研(10月14日)の課題図書は、ジャン・ボードリヤール『象徴交換と死』という難解な哲学書の「第一部 生産の終焉」に決定した。よって、「いくら君」は9月6日から本書を読み始めた。 しかし、とにかく難しい。ベースにマルクス『資本論』とソシュールのアナグラム論があって・・・
昨日の「芥研」 「先生とシイタケ」(長谷川充)
昨日、14時よりズームにて「芥研」が開催された。お題は「先生とシイタケ」、発表は長谷川氏である。 『こころ』上巻で、「私」が父の病気の知らせを受け急遽「先生」に旅費を用立ててもらい国へ帰る。しかし、父は案外元気そうにしている。母は、「先生」にお礼として「今度東京へ行くときに・・・
夏目漱石『こころ』読了
いったい何回目だろう? 高校2年の時授業で取り上げられた直後に新潮文庫で読んでから、大学の時に2回くらい、教員になってから何回読んだだろう? もう忘れてしまった。何回読んでも、毎回発見がある。それは、人生の時を重ねるにつれ、今まで理解できなかった、人間であるとか、人の心理で・・・
平野啓一郎『本の読み方』スロー・リーディングの実践
前回紹介した『小説の読み方』のが、発展編だとしたら、本作『本の読み方』は初級編にあたる。読む順序(ここに紹介する順序)が逆になってしまった。だからと言って、なんということもない。それぞ素晴らしい読書論になっている。 本作は2006年刊行され、好評により2019年6月に文・・・
平野啓一郎『小説の読み方』読了
フランス心理文学読解シリーズを少しおやすみし、今回は平野啓一郎『小説の読み方』である。小説の読み方は、人によって、時代によって、性別によって、置かれる立場によって、それぞれ自由であることが保証される。 しかし作者が魂をかけ紡ぎ出した物語の真の意図を理解できなければ、作者・・・
内館牧子『終わった人』読了
本日は昨年の8月心筋梗塞で入院し、ステントを入れた87歳になる母の検診日であった。1年ぶりの心臓検査。造影剤のようなものを入れ、平常時の心臓の様子をRIでみる。その後、薬剤を投入し軽い運動をした状態に人工的にし、また同じようにRIで心臓を見て、差を比較し、現在の状況を判断す・・・