ジャン=ポール・サルトル『嘔吐』読了
前回のカミュ『異邦人』に引き続き、不条理シリーズ。今回は、サルトル『嘔吐』です。本作は、読み続けるのが、難しく(彼の文章が私を拒んでいる感じ)、なかなか進まず、苦労しました。
サルトルは言わずと知れた「実存主義哲学」の人であります。右目が斜視で特徴的な容貌を持つ方だと、子供の頃から印象深い人でした。肩書きとしては、哲学者というのが
一番に来ると思いますが、彼が世に出た最初はこの『嘔吐』という小説でした。1905年生まれの彼が33歳の時、この作品を世に問いました。1938年のことです。カフカの影響をかなり受けているようです。
さて本作ですが、高等遊民的な生活を送る「アントワーヌ・ロカンタン」が、「ド・ロルボン侯爵」の歴史書を書くため3年前より「ブーヴァル」に滞在しています。本作は、そのロカンタンの日記、という体です。ロカンタンは基本的に図書館で調べ物をし、「鉄道員さんたちの店」で食事をしたり酒を飲んだりしています。そこのマダムとは肉体関係を持っています。
ある日、「水切り」をしようと石を持った際、不思議な不快感に襲われます。彼はそれを〈吐き気〉と表現します。
以後、様々な場面で「嘔吐感」に」襲われ、図書館で知り合った独学者とのランチ中にも嘔吐感に襲われますが、その後立ち寄った公園でマロニエの木を見た瞬間に原因が判明します。
それは「存在」についての気づきでした。全てのものはただ偶然存在し、また自分自身も偶然存在し、その存在に何の意味もない、という気づきが彼に嘔吐感を起こさせたのでした。しかし、「鉄道員さんたちの店」である音楽を聴いている時はその発作が来ないのです。
彼は自己の「存在」について思考を深めるとともに「ロルボン侯爵」の伝記執筆を放棄し、元恋人アニーとの再会と別れを経験し、この地を離れ「パリ」に移住することを決意します。最後に寄った「鉄道員さんたちの店」で、給仕のマドレーヌの勧めで音楽を聴きながら、小説を執筆することが自分を救うことだと決意するシーンで終わります。
全体、辛く苦しい文章に覆われていますが、何らかの結論めいたものを獲得したロカンタンが小説を書く決意をする箇所は、前向きで明るく素晴らしい描写でした。
一般的にわれわれは社会の中である何らかの意味を持って存在していると考えています。しかし、サルトルによれば、われわれの存在に意味など全くないのです。それは演技であり、実存は無であるという結論を得た際の衝撃を理解する必要性を言いたいのだ、と、本作から受け取りました。生きる。食う、寝る。その原点から全てが始まるのであって、虚飾の意味づけを罵倒するサルトルの厳しい捻くれ度が十分に伝わってくる作品でした。
ついてない東京コトリップ
- 遠井ちゃんとの京都行きが中止になったため,1人東京コトリップを画策した。やはり,泊まりは聖地北欧(上野)。で,以前行った鴎外記念館のカードがある。これを今コラボ中の漱石山房に持って行けば,入館料は半額で,その上,記念の缶バッチが貰える。
- ということで,早稲田にある漱石山房を第一目標とし,鶯谷の子規庵を訪ねる,というルートを考えた。
- 25日朝10時自宅発。最近相鉄が延伸し,新宿まで乗り換えなしで行けるという,大変喜ばしい事態になっている。嗚呼,長生きはするものである。
- ところが,この日に限って,渋谷人身事故の影響で大崎辺りから動かなくなった。それでもどうにか渋谷まで行き,地下鉄で早稲田付近に向かうことを決断する。これが①
- 西早稲田から歩くも,ナビに大回りさせられ,15分のところ30分かかる。②
- ようやく到着した漱石山房だったが,月曜日は休館!③
- まあ,明日行けばいいやと,気を取り直し,昼飯屋を探すも,早稲田の学生だらけで,どこも大混雑状態であった。④
- ようよう,飯田橋まで避難し昼飯にありつく。
- では,鶯谷も子規庵もまさか?と,調べてみる。あらまあ,今年の開館は昨日24日で終了だとさ。⑤
- 上野で,あちこち散策し,ようやく北欧に到着。3時半頃から1時間半、3セットを決める。アウフガースの予定表が貼ってあったが,昨日24日までしか載っていない。月曜日だからないのか?と,特に深掘りせず,飲み食い寝る。翌朝5時にサウナへ入ると,新しいアウフグースの予定表が張り替えられている。みるとはなしに見てみると、昨日私が上がった30分後に,鮭山さん(世界大会で6位になった伝説の女性熱波師)がやっている。泣いた。⑥
- 今日(26日)は,上野の科学博物館へ行き,それから地下鉄を乗り継いで,早稲田漱石山房に無事到着。漱石の世界を満喫し,今新宿発海老名行きの中でこの文章を書いた。
- 6つの残念なことがあったが,最後は満願叶いよしとする。サウナは相変わらず良かったのである。
正岡子規&娘
うちの娘は9月17日生まれである。後日,正岡子規と同日だと知り,親バヤ野郎はにわかに興奮したのであった。
4.5歳の頃,冬,西伊豆をドライブし,休憩がてら,海を見ていると,突然彼女は,
「椿咲き山の緑と海の青」と一句放ったのである。
親バカ野郎は天才ではないかと疑った。
小学校2年生の時,北杜夫『船乗りクプクプの冒険』という文庫本を手渡すと2日後に読んだから返すと持ってきた。
親バカ野郎が中1の時,1週間ほど掛けて読んだ本である。
まさか,そんなはずはない。と,話を聞いてみると,確かに読んでいる様子である。
親バカ野郎は,彼女の天才を確信した。
確かに,国語はよく出来た。しかし,さほど読書家であるようにも思えない。
大学時代は芝居の脚本を書いていたが,今は,やっていない様子である。
最近,子規に再び興味を持ち,あれこれ読んだり,調べたりしていると,生まれは10月14日で,命日が9月19日とある。
あれ?
私の記憶違いだったのかしら?
よく調べると,旧暦の9月17日生まれであり,今の暦では,10月14日になる。
嗚呼,ズレていたのね。親バカ野郎の先走りだったことが,娘36歳にして判明した。
という,つまらない話でした。
有馬記念 データ
昨日は有馬記念でした。
朝から,さまざま検討し,三連複で勝負しましたが,散りました。
過去のデータで,近年,ジャパンC組は日程タイトのせいか,連に絡んでいない。
で,ドウデュースとタイトルホルダーの評価を下げました。
また,16枠は過去一頭も来ていないこともあり,スターズオンアースも,三連複フォーメーションの三列目にしてしまいました。
結局,その3頭が来たのですが,過去のデータに頼りすぎるのも,いかがなものかと、反省する次第です。
それにしても,ドウデュース×武は強かった。
おめでとうございます。
残念
25日26日は1泊で,遠井ちゃんと,京都のサウナ(ルーマプラザ)に行く予定であったが,遠井ちゃん40度の高熱のため,中止となりました。
残念!また,次回。
土起こし
本日は,来る春野菜の準備に土起こしをしました。2m×8mくらいです。冬は,収穫が中心で,さほど畑仕事がないため,土作りに励みます。
米糠を蒔いてスコップで30cmくらいの深さまで起こします。雑菌や虫などが冬の寒さで駆逐され,さらに米糠のおかげで土中の微生物が活発になるということです。
まあ,そういう現実的な効果を期待して作業をしているのですが,思わぬ効用があるようです。
単純作業ですが,それなりに力は必要です。しかし,段取りなどほとんど考えなくて済む作業です。するとスコップで土を掘りながら,なんだか色々なことが頭の中を駆け巡るのです。
しかし,後悔した時に頭の中を駆け巡るネガティブな奴じゃなくて,なんか良い感じの没入感の中,哲学的な思考であったり,創造的な発想ですあったりが,浮かんでは消え,浮かんでは消えするのです。
あやしうこそものぐるほしけれ
と,いう高揚感に包まれました。
土起こしはとても楽しい作業なのです。
12/21の種まき
昨日,種まきをしました。ミニ大根とカブとほうれん草です。
こんな寒い時期にできんのかいな?との声が聞こえてきそうですが,防寒対策をしっかり行えば,たぶん,きっと,おそらく,できるのです。
穴あき黒マルチをし,種まき後,籾殻をたっぷりかけ,上に不織布で覆います。水遣り後,穴なしビニールトンネルを施して完成です。
昨年はできました。
でも,最近の気候では,いつも通りやっていればいい,というわけには行きませんから,なんとも言えませんが。
祈ります。🙏
カミュ『異邦人』読了
アルベール・カミュは1913年11月7日、フランスの旧植民地アルジェリアで生まれた。アルジェリアは地中海を挟んでイタリアの向かい側、エジプトの隣にある。
カミュは、1940年5月に本作を発表し、27歳にして一躍文壇の寵児となったという。
本作は、1部と2部に分かれている。
1部は、主人公、青年ムルソーが、母の葬儀の翌日海水浴に行き、女と関係を結び、映画を見で笑い転げ、友人の女出入りに関係しアラビア人を銃で殺害するまで。文体は、乾いており、事実を淡々と積み重ねていく。ムルソーは、知的だが、どこか冷めた青年である。描写は淡々としながら、暑さと眠りについては、しつこいくらいに強調される。
2部は、投獄されたムルソーと弁護人、判事、裁判官とのやり取りの中で、ムルソーから受ける、何事にも媚びないアンニュイな独特の雰囲気に、弁護士は頭を抱え、裁判官は怒り、死刑判決が下される。ムルソーは特にとんがっているわけでもなく、ただ自分に正直に生きるだけである。裁判を自分に有利になるよう働きかけることはしない。ただ、正直に彼の思いを語るだけだ。周りの皆は、母の葬儀の際涙を流さなかった、という一点で彼から負の印象を受け、彼が極悪人であるが如き判決文を作成していく。死刑判決を受けたのち、当然ながら彼は苦悩する。他者からは一貫性のない思いつきの発言をするように受け取られるムルソーであるが、世俗的に標準化された正義に対し不快感を持ち、自分を貫き通す。殺害の動機は「太陽のせい」という有名な箇所には痺れる。彼のような人間は、システムに迎合した社会的立場のある人間には理解されない、無力でアンニュイで気まぐれで誰よりも自分に誠実なムルソー。自分は幸福であると確信し、処刑の日に大勢の見物が憎悪の叫びをあげてくれることを望む。
この世は全くの不条理である。
ヨコヤマユーランド 昔の話
ヨコヤマユーランド鶴見は私の大好きな温浴施設の一つです。
施設は古く,地元のジジババの集会場,という感が拭えませんが,お湯もサウナも超一流。とても素晴らしい施設です。
ちょっと前の話。
私はド近眼で,メガネなしには歩けないような有様なのですが,さすがにサウナに入る時は外します。だいたい入り口付近にメガネ置場があります。
その日,メガネを置こうとすると,メガネ置場がいっぱい🈵。(3つ分)。
しかし,その中の一つは、ビニールに包まれた文庫本が載っている。
ここは,メガネ置場だ!私は不愉快な気持ちで,メガネを別の場所に置き,サウナで蒸されました。
7分ほどで出て,水風呂に入ろうとすると,私よりひと足先に出た若者が,水風呂に飛び込み,頭から浸かり,しばらく死体のようにぷかぷかしています。
それを見て,私の後ろにいたジーさんが,なんだありゃ,プールじゃないのに。マナーがなってないなぁ。と,私に同意を求めるのです。
同感の私は,ジーさんに相槌を打ち,目で共感した旨を伝えました。
が,次の瞬間,そのじーさんは、メガネ置き場の文庫本を持って,脱衣場に戻ったのでした。
目が点になりました。
ジャンジャン。