その他のこと 2024年5月24日
椅子
以前,作家の平野啓一郎氏がX(旧Twitter)に,二十数年使い続けたレカロの椅子を処分し,新しい物を購入したとの内容をアップしていた。この椅子の元で数々の名作が生まれた(芥川賞受賞作もこの椅子から生まれたとのこと)のである。当人にとっては感慨深いものがあったろう。自身の軌跡や過去を葬り新たな自己に立ち向かう,などなど。
最近腰の調子があまりよくない。というより悪い。いつからこうなったのか忘れた。いつのまにかこうなった。布団から立ち上がる時はある種の決意がいる。また,読書中はいいのだが,椅子から立ちあがろうとすると慢性化した腰痛を強く意識せざるをえない。
そんな状態で漫然とする中,平野氏の逸話を思い出した。
「そうだ。椅子を新調しよう!」
現在使用中の椅子は,30数年前,父が生前,職場の廃棄品を頂戴してきた代物である。まあずいぶんお世話になった。潮時であろう。妻はゲーミングチェアを勧める。それこそ,一日中ゲームをしている人が使う物であるから,腰痛に悪いはずはない,と。
で,購入した。得意のAmazonである。安い。中国製である。少し心配ではあるが,えいやっ!と思い切った。数日後小さく梱包された荷物が届いた。各パーツバラバラである。自分で組み立てなければならない。マニュアルと睨めっこののち2時間かかった。しかし,完成した椅子に座るとすこぶる調子がいい。ヘッドレストもフットレストもある。心地よい。読書にも良いが,うたた寝に最高である。
良い買い物であった。この椅子でカントを読み,うたた寝をするのである。
ちなみに冒頭の平野氏のXを読んだ九州の博物館が廃棄処分の椅子を貰い受け,展示されるとのことである。